藍青

〜晴れ時々日記〜 SHOがつづる短歌、旅行などなどの日記です。
香川県に住んでいるバイク好きです。愛車ヤマハYZF-R6の話も、書いていきます。
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明日から仙台
明日の仕事明けから、退学の挨拶のために仙台へ行ってくる。
大学退学かぁ。結局6年かかって卒業できなかった。最後の2年間は休学していて、そのうち
1年半は草津に住んでいた。仙台を離れて2年しか経っていないとは思えないほど、仙台は遠い遠い
土地になってしまった。もはや、仙台に住むことはもう二度とないだろう。

私の同級生の多くは、私の退学と期を同じくして大学院を修了する。私も、彼らと同じ輪の中で
大学院を修了したかったな。せっかく国立大学の社会人AO入試の第一期生として入学したのに、
私の社会人同級生3人の中で学部卒業に漕ぎ着けたのは結局1人しかいない。

どうすればよかったのだろう。今となっては全てが遅すぎるのだけれど、命を失わずに済んだ
だけでも良かったと言うべきなのだろうか。3年半前の秋のある日に、自殺していれば今の私は
これだけ幸せを感じることもなかったはずだ。

久しぶりに春畑茜さんの第一歌集『振り向かない』を開いた。こんな歌が目に付く。

救急車、ストレッチャーに胃洗浄…なぜか記憶はたったそれだけ

つづまりは死にぞこないと思うとき「ぶざま」なる語のうかびて消えず

欝を抱きぽつりぽつりと上る坂夕焼けてゆく空に向かって

これらの歌を読むたびに、自殺準備状態以上の状態になったことのある人には、何年が経っても
ありありと昨日のように浮かぶ記憶があることだろう。同じ歌集の別の連作には、こんな歌もある。

負けたくはない…ない…ない…と口ずさみうす紅のマニキュアを塗る

まだできる、もうできない、と迷いつつ食パンの耳かじり尽せり

思い出が危うく吾を壊す夜突っ立ったまま馬鈴薯を煮る

ひと切れのアップルパイに癒されてしまうさみしくわれの何かが

されどなお吾は生きゆく春雷を伴う雨の激しき中を

久しぶりにページをめくりながら、なんだか疲れてしまうのだけれど、こんな歌もある。

消したはずなのにわたしの声がする もしもあの時 どうしてもっと…

こんなはずではなかったのなかったの…花屋の隅に散るチューリップ

洗ってもぬぐってもまだありありと手にしみついている挫折感

パレットの絵具を洗い流したり永遠に開かぬ扉を描いて

この歌集には、毎年、春になると決まって思い出す歌がある。それはこんな歌。

せつなくも弾む心よ自販機の「春一番」に春を感じて

今の私はそれなりに幸せだ。仕事の休みは、日数こそ少ないもののかなり自由に取ることが
できるし、何よりも今の私は心身ともにある程度は健康だ。草津に暮らしていることを考えれば
決して厳しい生活をしているわけではないし、会社にもそれなりに大事にしてもらっていると
感じる。会社の人も、みんな優しい。だからいいじゃん、とはならないのが人生で、それでも
やっぱり仙台で暮らした4年間は、人生で最も惨めな思いをして過ごした時期のひとつである。
この先どう生きようと、仙台で暮らした4年間を肯定することなどしない。

仙台に住んでいた当時、私が重度の欝症状だとどれだけ訴えても聞いてくれる人はいなかった。
自分が危ない状態にあると自覚できているうちは重度じゃない、と言うことなのか、それとも
単に重度の欝を抱えた学生が多すぎて無関心だっただけなのか。

今も時々、もしあの時に自殺していたら大学のAOセンターの教授たちは首が飛んだのだろうか、
と思うことがある。少なくとも社会人AO入試を行った大学上層部に激震が走っただろうことは
間違いないのだけれど、それでも誰も責任を取ることもなく、私の家族と友人たちが悲しむだけで
記憶の中に風化されたのだろうな、と思うと、自分の命の重さについてやりきれない気持ちになる。

そして、そんな私の当時の短歌を読んで「短歌の素晴らしさを再認識した」歌人の栗木京子さんは
私が作品を提出した二週間後に自殺したと聞いたら、どのような反応を示したのだろうか。独特の
視線と技術を持つ歌人であることは認めつつ、この一点で、私は彼女の短歌眼を信頼する気にならない。
栗木京子に限らず、人間の生き死にさえ批評のための食い物にしてしまう歌人と言う生き物の
浅ましさには、自分の命の尊厳を侵されているような気さえする。

私は短歌も鉄道も、そのものは大好きだけれど、短歌オタクも鉄道オタクも嫌いだ。短歌オタクは
良くて鉄道オタクは良くない、ってことはない。鉄道の最高級個室寝台に泊まって見学者を迎えた
感想として「鉄道ファンよりもスキー客の方が人間として上等なのだろうか」と書いたのは
宮脇俊三だけれど、おそらくそんなことはない。どんな趣味を持っているかが問題じゃなくて、
その人の中身が問題なのだ。どちらの業界にも素晴らしい人はたくさんいるし、どうかなと思う
人もまたたくさんいる。短歌も鉄道も「オタク」は嫌いだ、と言い切ってしまうと、両方に友人を
多く抱える私は大いに差し障りがあるのだけれど、友人の中には私の言わんとすることが分かる
人もまた多くいると思う。

今の私は、ほとんど歌を詠んでいない。近代歌人の歌集は買って読んでいるけれど、現代歌人の
最新の歌集はもう1年以上買っていない。修辞に命を賭け、常に最新の歌集を読み漁っていないと
歌人として価値がないと思い込んでいる人たちの輪に加わることに、なんだか疲れてしまった。
そんなことよりも、人生にはもっと大事なことがあるのに、と言う違和感を私は今、持っている。

明後日から始まる大学短歌会の合同合宿に参加することは純粋に楽しみだ。初日で僕は抜けます、
と後輩や他短歌会の友人に告げるとき、完全に第一線から退いた自分を見つけてとても寂しい
気持ちがあった。短歌をやめることはおそらく一生ないし、どうせまた詠み始めるに決まって
いるから心配はしていないけれど、今は短歌よりも別の趣味を優先したい。スキーにしても
鉄道旅行にしても、人生の中で今経験しないと経験できないことをもっと経験したい。

旅行にしても短歌にしても、西村一人はやっぱり名前の通り「一人」に戻って行くのだな、
と思う。私の本性はとても無口だ。私の中には、誰も知らない私がいる。「一人がつまらない
ことを思い知るために一人旅するようなものだ」と言ったのは高倉健だけれど、結婚していく
友人を見て羨ましく思う反面で、やっぱり人付き合いに疲れてしまう自分もいる。
| SHO | 短歌 | 10:25 | comments(5) | - |

コメント
>「一人」に戻って行くのだな。

共感しました。なんて言葉にすると軽くなってしまう気がするほどに、沁みます。
結婚していても、結局のところは「一人」である自分がものを言うのでしょう。人との繋がりは大切だけれど、私も疲れてしまいます。丁度、今そんなときだったので。
なんだか救われました。ありがとうございます。
| ライラ | 2006/03/16 2:02 AM |

何かとってもわかりやすくてよかったです。
そういうのもいいもんですな、うん。

>仙台で暮らした4年間を肯定することなどしない。
ぼくが8年を経て離仙しようとするころ、初めて部室でみかけてから6年。どこか浮き上がっているような危うさは感じていたのですが、やっぱりけっこうつらいこともあったのでしょうね。そういうときに心の居場所があればいいけど、同世代の友人はみんな社会人だったりするので、そういう制度を作っておいてフォローをきちんとしきれなかった大学の責任はあるでしょうね。入学させておいて就職までのビジョンが示せないなら止めた方がいいとは思います。

それにしてもあれから6年ですか。何だか遠い昔の記憶ような気がします。悪い記憶もあるなら仕方ないけど、いい記憶が少しくらいあったなら、少しくらいは気にかけてやってください。私にとって仙台ってのはね、ずっと暮らすところではなく、たまに遊びに帰るところ、なのです。
| 電話ありがとう | 2006/03/16 2:56 AM |

>ライラさん
一人でいる時間は、自分にとって敵でもあり友でもあり…と言うことを思います。
一人で行動することも多いし、孤独も昔から好きですが、そういう自分を
疎ましく思うこともとても多いですね。

>電話ありがとうさん
コメントありがとうございます。仙台での4年間は、辛いこともかなりありました。
気がついたら6年が経ちましたが、大学時代のサークル活動は他の大学生以上に
充実していたし存分に楽しんだと思いますよ。大学時代を振り返るとき、
そのことは大きな救いであり慰めです。

今後とも、どうぞよろしくお願いします。
| にしむら | 2006/03/18 3:08 PM |

にしむらさん、こんにちは。
もうずいぶん前の歌になりますが、読んでくださってありがとうございます(ぺこり)。
まもなく第二歌集を出します。
ずいぶん歌が変わったかなとも思います。
| はるはたあかね | 2006/04/06 12:42 PM |

はるはたさん、こんにちは。
もう「ずいぶん前の歌」になってしまいましたね。
第二歌集を楽しみにしています。
| にしむら | 2006/04/09 9:13 AM |

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